第1章 金融犯罪 -1.マネーロンダリングとは①

配点をもう一度おさらい。

  • 1.金融犯罪・・・12点
  • 2.FATF・・・10点
  • 3.国内法規制・・・10点
  • 4.リスクベース・アプローチ・・・20点
  • 5.管理態勢・・・12点
  • 6.顧客管理・・・18点
  • 7.疑わしい取引・・・18点
第1章 金融犯罪については、とても簡単ですが配点が多めに設定されており、点を取れやすい項目です。ここでも引っかけ問題には注意してください。

マネーロンダリングとは?

マネーロンダリングとは

「資金洗浄」を意味し、一般に「犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者からわからないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為」をいいます。

つまり、違法な起源を擬装する目的で犯罪収益を処理することで、具体的には、犯罪行為で得た資金を正当な取引で得た資金のように見せかける行為や、口座を転々とさせたり、金融商品や不動産や宝石などに形態を変え、その出所を隠したりすることです。

マネー・ロ-ンダリングをわかりやすく図式化したものがありましたので参考にしてください

「マネー・ローンダリング対策のための 事業者による顧客管理の在り方に関する懇談会」2010年2月5日 警察庁刑事局組織犯罪対策部より引用

マネーロンダリングの内容と金融取引

形態は様々なものがありますが、3つの段階で分類されることがあります。

マネーロンダリングの段階
  • プレースメント ⇒不正に得た資金を入金(犯罪収益を金融システムに取り込む)
  • レイヤリング ⇒送金・変換を繰り返し隠匿(犯罪収益を隠匿する)
  • インテグレーション⇒合法的な資金として利用

①②③の頭文字、①プ→②レ→③イ、「プレイ」と覚えましょう!

金融取引がマネーロンダリングに活用されるケースとは

  • プレースメント段階→銀行・証券口座への(小口にするなどしての)入金、預入
  • レイヤリング段階→架空銀行(シェルバンク)やマネロン規制が厳格ではない外国の金融機関等を経由した外国送金や、トラベラーズチェック(T/C)や信用状(L/C)による金融機関を経由した換金換価行為等。複数・複雑な取引が組み合わされることで、より追跡は困難となる
  • インテグレーション段階→金融機関による合法的事業へのローン実行・融資などの資金提供を通じた正当な事業資金への組み入れを通じた犯罪収益の合法的利用。これにより隠匿行為が完了することとなる。
マネーロンダリングに活用される取引は、伝統的には金融機関の金融口座を利用した取引が想定されていた

②のレイヤリング段階以降になると、金銭や資産の経路を追跡することが極めて困難となるので、①のプレースメント段階で防止することが一番効果的な施策であると考えられています。

したがって、金融機関には、口座開設時や、取引開始時を中心に顧客の本人確認・取引時確認などが要請されています。


マネーロンダリングに関連する取引の拡大

FATF勧告による本人確認等の強化

金融機関や金融取引には効果を上げた。

しかし、金融機関以外の職種で、金融取引以外の取引がマネロンに活用されるなど、手口の複雑化・巧妙化がみられるようになった。

2003年FATF勧告を改訂

DNFBP(s)に対しても適用することになった。

Designated Non-Financial Business and Profession (s)

不動産業者、宝石商・貴金属商等の指定非金融業者、法律家、会計士等の職業専門家

2012年の「新40の勧告」

法人・信託、電信送金システムに関する透明性の向上や法人や信託の実質所有者・支配者に関する情報、電信送金を行う際に必要な情報の基準厳格化などを盛り込み、対策が強化された。

2015年エルマウ・サミット首脳宣言

仮想通貨や新たな支払手段の適切な規制を含め、すべての金融の流れの透明性拡大を確保するためのさらなる行動をとることが言及された。

2015年FATFが仮想通貨に関するガイダンスを公表

仮想通貨と法定通貨を交換する交換所(exchanger)に対し、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認や疑わない取引の届出、記録保存の義務等のマネロン・テロ資金供与規制を課すべきである、との提言がなされた。

2017年4月①「資金決済に関する法律」(資金決済法) ②犯収法改正

①仮想通貨交換業者について登録制度導入

②暗号資産交換規業者が特定業者に含まれることになり、登録を受けた暗号資産交換業者は、暗号資産の交換等の取引に関して取引時確認義務等を負うことになった。

2018年7月 特定複合観光施設区域整備法(いわゆるIR実施法)が成立

同法に基づく認定・免許を得たカジノ事業者も犯収法上の特定事業者となった。

2020年5月 資金決済法改正

暗号資産のウォレット専業業者も犯収法上の暗号資産交換業者に含まれることになった。

2022年12月交付のFATF勧告対応法(2023年6月1日施行)

外国為替取引に係る通知義務に基づく通知事項に、支払の相手方に係る事項を追加する規定の整備、

電子決済手段および、暗号資産の移転に係る通知義務(トラベルルール)に基づく通知事項、電子決済手段等取引業者および暗号資産交換業者がアンホステッド・ウォレット等と取引を行う際の取引時確認等を的確に行うために講ずるべき措置、電子決済手段等取引業者および暗号資産交換業者が移転に係る提携契約を締結する際の確認義務に基づく契約相手のマネロン対策状況の確認方法・基準などに関する規定が整備された。

2023年6月 資金決済法・犯収法等の改正

高額電子移転可能型前払式支払手段の発行者についての不正利用の防止等を求め、業務実施計画の届出ご定められ、犯収法上の特定事業者に、高額電子移転可能型前払式支払手段発行者や電子決済手段等取引事業者等が追加された。

→特定業務、特定取引の用件が定められ取引時確認の方法や電子決済手段の換算基準を定める等の規定が制定された。

2024年4月 改正犯収法施行

FATF勧告対応法により、法律・会計等専門家に係る取引時の確認事項に取引目的、法人の実質的支配者等を追加するとともに、疑わない取引の届出義務に関する規定を整備する内容が盛り込まれた。

手口の複雑化・巧妙化が進み、IT技術の進歩や経済・金融サービスのグローバル化の進展により、悪質化が進行する可能性も高くなりました。

マネーロンダリングとは① まとめ
  • 金融機関の金融口座を利用した取引その他金融取引は、マネー・ローンダリングに活用されやすいため、金融機関は、ゲートキーパー(門番)として、マネー・ローンダリング対策を講じることが非常に重要です。

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