研修、マニュアル、責任者の選任、記録の保存—— 取引時確認を「窓口任せ」にせず、組織全体で的確に回すための仕組みが 「内部管理態勢の整備」です。10項目の全体像と、統括管理者のルールを まとめて一問一答でチェックしましょう。
- 内部管理態勢の整備の中身は10項目(教育訓練/規程の作成/統括管理者の選任/特定事業者作成書面等/情報の収集・整理・分析/記録の継続的精査/統括管理者の承認/結果の記録・保存/必要な能力を有する者の採用/監査)。本文の一覧boxで全体像をつかむ。
- 統括管理者は「各営業店に必ず1名」という規定はない。複数名の選任も、内部監査業務を行う者の選任も可能。実際に取引に従事する者より上位の地位で、一定程度独立した立場の者が想定される。
- 統括管理者が権限を委任することは禁止されていない(特定業務に係る高リスク取引の承認を他の者に任せることも可)。
- 高リスク取引の承認は取引の都度必要だが、必ずしも取引前でなくてよい(取引を行うに際して行えば足りる)。承認にあたっては犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案する。
- 特定事業者作成書面等は、国家公安委員会が公表する犯罪収益移転危険度調査書の関係部分をもとに、自社のリスク要因を加味して作成。作成時期・保存期間・管理方法に法令の定めはなく、新たな技術・態様による取引も調査・分析の対象に含む。
- 確認記録・取引記録等の保存期間は取引終了後7年間(電磁的記録媒体でも同じ)。継続的な精査は取引が終了した顧客には不要で、頻度は各事業者が合理的に判断。監査は外部監査に限定されない。
前の記事③で見たとおり、顧客管理措置の柱のひとつが内部管理態勢の整備(犯罪収益移転防止法11条各号・同法施行規則32条1項各号)です。その具体的な中身は、次の10項目に整理できます。
内部管理態勢の整備の10項目
- ①使用人に対する教育訓練…法の内容や社内規則の周知(研修のほか社内通達・通知による周知も)
- ②規程の作成…取引時確認等の実施手順・対応要領を定めた規程(社内規則・社内マニュアルも含む)
- ③統括管理者の選任…監査その他の業務を統括管理する者を選ぶ
- ④特定事業者作成書面等の作成・見直し・変更…自社の取引を調査・分析した書面(リスクベース・アプローチの考え方に基づく措置)
- ⑤必要な情報の収集・整理・分析…書面等の内容を勘案し、取引リスクの高低に応じて実施
- ⑥確認記録・取引記録等の継続的精査…目視での確認やシステムによる異常検知
- ⑦統括管理者の承認…特定業務に係る高リスク取引について取引の都度
- ⑧結果の記録・保存…高リスク取引の分析結果を書面にして確認記録等とともに保存
- ⑨必要な能力を有する者の採用…面接等で適性を把握(一定の資格保有者に限る趣旨ではない)
- ⑩監査…外部監査に限定されず、内部監査・社内検査でも可
10項目の中でも特に間違えやすいのが統括管理者です。「決まっていそうで、実は決まっていない」ポイントが多いのが特徴です。
統括管理者はここが問われる
- 人数…「各営業店に必ず1名」という規定はない。事業者の規模・組織構成によりさまざまで、複数名の選任も可
- 誰がなれるか…クラス(役職)に一律の基準はない。取引に従事する者より上位の地位で一定程度独立した立場の者が想定され、内部監査業務を行う者の選任も可能
- 権限の委任…禁止されていない。高リスク取引に関する承認を他の者に委任することも可
- 高リスク取引の承認…取引の都度必要だが、必ずしも「取引前」でなくてよい(取引を行うに際して行えば足りる)。承認では犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案する
自社の取引にどんなリスクがあるかを調査・分析して書面にしたものが特定事業者作成書面等です。リスクベース・アプローチの考え方に基づく措置で、何をもとに作るか・何が対象かが問われます。
特定事業者作成書面等・記録・精査・監査
- 何をもとに作るか…国家公安委員会が公表する犯罪収益移転危険度調査書の関係部分をもとに、自社のリスク要因を加味(金融庁のガイドラインではない点に注意)
- 法令の定めがないこと…作成時期・保存期間・管理方法は法令に定めがなく、業態や事業規模等に応じて各事業者が合理的に判断
- 対象となる取引…「自らが行う取引」には新たな技術を活用した取引や新たな態様による取引も含まれる
- 保存期間…確認記録・取引記録等は取引終了後7年間(電磁的記録媒体で保存した場合も7年間)
- 継続的精査…目視確認(取引目的・職業との整合性)やシステムでの異常検知。取引が終了した顧客は対象外。頻度は一律に決まらず、無作為のサンプリングチェックだけでは不十分とされるおそれ
- 監査…外部監査に限定されず、内部監査・社内検査でも可。頻度も一律に決まらない
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問題 1 / 24
取引時確認などを的確に行うために必要な能力をもつ職員の採用にあたって、金融機関は、法令で定められた一定の資格をもつ者だけを採用しなければならない。
必要な能力を有する者の採用は、行職員が取引時確認などの措置を的確に行えるようにするための要請であり、一定の資格をもつ者に限って採用することを求めるものではありません。
問題 2 / 24
必要な能力をもつ者を採用するための措置の例としては、採用の際に面接などを行って、反社会的勢力にあたる人物を採らないようにすることや、教育訓練とあわせて能力を身につけられる適性があるかを把握することが考えられる。
面接等による適性の把握や、反社会的勢力に該当する者を採用しないことなどが、採用に関する措置の具体例として考えられています。
問題 3 / 24
統括管理者は、金融機関の規模にかかわらず、各営業店に必ず1名ずつ配置しなければならない。
統括管理者に該当する者は、事業者の規模や組織構成によりさまざまな者が想定されており、「各営業店に必ず1名」という決まりはありません。必ずしも1名である必要はなく、複数名を選任することもできます。
問題 4 / 24
内部監査業務を担当している者を、統括管理者として選任することもできる。
統括管理者のクラス(役職)に一律の基準はなく、内部監査業務を行う者を統括管理者に選任することも可能とされています。
問題 5 / 24
統括管理者には、取引時確認などについて一定の経験や知識をもち、実際に取引に従事する者より上位の地位にあって、ある程度独立した立場から業務全体を統括できる者が想定されている。
取引の現場から一定程度独立し、かつ現場より上位の立場で業務全体を統括できる者が、統括管理者のイメージとして想定されています。
問題 6 / 24
統括管理者は自らの権限を他の者に委ねることができず、特定業務に係る高リスク取引の承認を、別の担当者に任せることも認められていない。
統括管理者が権限を委任することは禁止されておらず、特定業務に係る高リスク取引に関する承認を他の者に委任することも禁止されていません。
問題 7 / 24
取引時確認などの的確な実施のために求められる監査は、毎年度1回以上、外部の監査人によって実施しなければならない。
監査は外部監査に限定されず、内部監査や社内検査によって実施することもできます。頻度も一律に決まっておらず、効果的かつ十分と認められる程度で足ります。
問題 8 / 24
金融機関には、取引時確認などの実施の手順や対応要領を定めた規程を作ることが求められており、この規程には社内規則や社内マニュアルなども含まれる。
規程の作成は犯罪収益移転防止法11条2号に定められており、社内規則や社内マニュアルといった形のものも「規程」に含まれると考えられています。
問題 9 / 24
使用人に対する教育訓練では、犯罪収益移転防止法の内容や、マネロン・テロ資金供与対策についての社内ルールなどを使用人に周知させることが求められる。
教育訓練(同法11条1号)は、法の内容や関連する社内規則の理解を深めて周知するためのもので、研修のほか、社内通達・通知などによる周知も考えられます。
問題 10 / 24
特定事業者作成書面等は、金融庁が公表しているマネロン・テロ資金供与対策のガイドラインの記載をもとに作成することとされている。
特定事業者作成書面等は、国家公安委員会が公表する「犯罪収益移転危険度調査書」の関係部分をもとに、必要に応じて自社のリスク要因を加味して作成します。金融庁のガイドラインではありません。
問題 11 / 24
特定事業者作成書面等について、作成の時期・保存する期間・管理の方法は、犯罪収益移転防止法等で細かく定められている。
特定事業者作成書面等の作成時期・保存期間・管理方法には法令上の定めがなく、業態や事業規模などに応じて、各特定事業者が個別に合理的に判断して決めることとされています。
問題 12 / 24
確認記録や取引記録等の継続的な精査の例としては、保存している記録を目視で確かめて、取引の目的や職業と整合しているかという観点から異常がないかを確認することや、システムで取引の異常を検知することが挙げられる。
目視による確認(取引目的・職業との整合性のチェック)や、システムによる異常検知が、継続的な精査の例として挙げられています。
問題 13 / 24
継続的な精査は、すでに取引が終了した顧客も含めて、取引履歴のあるすべての顧客の確認記録等について行わなければならない。
取引自体が終了した顧客に係る確認記録等の継続的な精査までは想定されていません。
問題 14 / 24
特定業務に係る高リスク取引について統括管理者が行う承認は、どのような場合であっても、取引の前に済ませておかなければならない。
承認は取引の都度行う必要がありますが、取引を行うに際して行えばよく、必ずしも「取引前」に行う必要はありません。
問題 15 / 24
統括管理者は、高リスク取引の承認にあたって、その取引がどのような理由で高リスクとされているのかなど、犯罪収益移転危険度調査書の内容をふまえることとされている。
承認の際は犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案します。なお、効果的かつ十分と認められるのであれば、統括管理者から委任を受けた者が承認を行うことも可能です。
問題 16 / 24
継続的な精査をどれくらいの頻度で行うかは一律には決まっておらず、取引のリスクの程度や態様などを踏まえて、各特定事業者が合理的な範囲で判断する。
精査の頻度は各事業者がリスクや取引の態様を踏まえて合理的に判断します。年1回で十分かどうかも、その年の取引の有無や回数によって変わり得ます。
問題 17 / 24
確認記録や取引記録等は、それぞれ取引が終わった後、5年間保存すればよい。
確認記録・取引記録等の保存期間は、それぞれ取引終了後「7年間」です。電磁的記録媒体で保存した場合の期間も、同じく7年間とする必要があります。
問題 18 / 24
特定業務に係る高リスク取引について、情報を集めて整理・分析した結果をまとめた書面等は、確認記録や取引記録等とあわせて保存することとされている。
高リスク取引については、その取引がどのような理由で高リスクとされているかに着目して分析結果を書面等にし、確認記録・取引記録等とともに保存します。
問題 19 / 24
特定事業者は、みずから作った特定事業者作成書面等の内容をふまえて、取引のリスクの高さに応じ、必要な情報の収集や整理・分析を行うことが求められる。
リスクの高低に応じた情報の収集・整理・分析が求められています。特定事業者作成書面等を起点にリスクに応じて対応する、リスクベース・アプローチの考え方に基づく仕組みです。
問題 20 / 24
特定事業者作成書面等を作る際、これまで取り扱ったことのない新しい技術や新しい態様による取引については、調査・分析の対象に含めなくてよい。
調査・分析の対象となる「自らが行う取引」には、新たな技術を活用して行う取引や、新たな態様による取引が含まれています。インターネットを介した手続きへの変更などもその例です。
問題 21 / 24
収集すべき「必要な情報」の例としては、顧客から申告を受けた職業などの真偽の確認や、期限切れになった本人確認書類について有効なものをあらためて入手すること、実質的支配者と顧客との関係の把握などが考えられる。
職業等の真偽の確認、期限切れとなった本人確認書類の再入手、実質的支配者と顧客との関係の把握などが「必要な情報」の収集の例と考えられています。
問題 22 / 24
確認記録等の精査は、無作為に対象を選ぶサンプリングチェックの方法で行えば、それだけで十分とされている。
無作為抽出のサンプリングチェックだけでは、取引時確認などの措置を的確に実施するには不十分とされる可能性があります。一定の敷居値などで異常な取引を抽出し、事後的に分析する方法であれば、精査手法のひとつとして認められると考えられています。
問題 23 / 24
集めた情報の整理・分析の例としては、疑わしい取引の届出を行うべき取引かどうかを判断する場面で、取引と矛盾する点や疑わしい点がないかという観点から分析することが考えられる。
収集した情報について、取引との矛盾や疑わしい点がないかという観点から分析することが、「整理・分析」の例として考えられています。
問題 24 / 24
高リスク取引に関して行う「調査」と、その結果を記載した書面等の作成に関わる「情報の収集・整理・分析」は、同じ目的で行われる同一の手続である。
高リスク取引に関する「調査」は疑わしい取引の届出を行うかどうかを判断するためのもの、「情報の収集・整理・分析」は疑わしい取引の届出を含む取引時確認などの措置全般を的確に行うためのもので、目的が異なります。

第6章 顧客管理
顧客管理措置における内部管理態勢の整備
顧客管理措置における内部管理態勢の整備
問正解 / 24問中
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第6章④まとめ:顧客管理措置における内部管理態勢の整備
- 内部管理態勢の整備=10項目(教育訓練・規程・統括管理者・特定事業者作成書面等・情報の収集/整理/分析・継続的精査・承認・結果の記録/保存・採用・監査)。
- 統括管理者=「各営業店に必ず1名」の規定なし・内部監査業務を行う者も選任可・権限の委任は禁止されていない。
- 高リスク取引の承認=取引の都度必要だが、必ずしも取引前でなくてよい。承認では犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案(委任を受けた者の承認も可)。
- 特定事業者作成書面等=危険度調査書の関係部分をもとに作成(金融庁のガイドラインではない)。作成時期・保存期間・管理方法は法令に定めなし。新たな技術・態様の取引も対象。
- 確認記録・取引記録等の保存=取引終了後7年間(電磁的記録媒体も同じ)。精査は終了した顧客には不要・頻度は合理的に判断・サンプリングだけでは不十分のおそれ。監査は外部限定でない。
【頻出ひっかけ】 ・統括管理者は各営業店に必ず1名 → ✕(そのような規定はない) ・高リスク取引の承認は必ず取引前 → ✕(取引を行うに際してでよい) ・確認記録等の保存は5年間 → ✕(取引終了後7年間) ・監査は毎年度1回以上の外部監査 → ✕(内部監査・社内検査でも可・頻度は一律でない) 試験、頑張ってください‼
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