その口座、本当に“ご本人”のものですか—— 架空名義・借名口座、なりすまし、第三者による操作。 お金や口座の「本当の持ち主・取引者」を隠す手口は、 近年、非対面取引でますます巧妙になっています。 預金と証券、それぞれの参考事例を一問一答で確認しましょう。
- 架空名義口座・借名口座はマネー・ローンダリングに悪用される可能性が極めて高い。真の保有者・取引者を「隠す」手口に注意。
- 近年は非対面の手口が大幅に増加=同一のIPアドレス・メールアドレス・携帯電話番号の重複、なりすまし、オンラインカジノ関連など。
- 口座開設や取引を断念させた場合でも、組織的犯罪処罰法は未遂も罰するため、その後の対応(届出の要否)を検討する。
- 借名・架空名義による取引は、犯収法上のハイリスク取引に当たらなくても、疑わしい取引に該当することがある。
- 借名口座対策で特定国籍を一律に謝絶するのはNG(金融包摂)。入口対策・出口対策で対応する。
架空名義口座や借名口座(他人名義の口座)、なりすまし、第三者による口座の操作など、口座やお金の「本当の持ち主・取引者」を隠す手口があります。とくに架空名義口座・借名口座は、マネー・ローンダリングに悪用される可能性が極めて高いとされ、十分な注意が必要です。
金融庁が公表している「疑わしい取引の参考事例」では、預金取扱金融機関について次のような取引が挙げられています。とくに近年は、IPアドレス・メールアドレス・携帯電話番号の重複や不一致、なりすまし、オンラインカジノ関連など、非対面取引の手口が大幅に加わりました(緑色で示した部分)。
預金:真の口座保有者を隠す“あやしさ”(4つの視点)
- 名義のあやしさ…架空名義・借名口座/事業実体のない法人の口座/屋号付名義などで多数の口座を保有
- 取引場所のあやしさ…居住地・勤務地に照らして、その支店で取引をする合理的な理由がない
- 連絡先のあやしさ…住所と違う送付先を希望/口座所有者と無関係なメールアドレス/同一の携帯電話番号が複数口座に登録
- 非対面・IPのあやしさ…名義も住所も違うのに同一のIPアドレス/国内居住なのにIPが国外/IPの追跡を困難にする/なりすまし・オンラインカジノ関連
証券取引・投資商品についても、金融庁の参考事例で次のような取引が挙げられています。架空名義・借名による取引や、名義を変えての複数口座など、預金と共通する着眼点が多いのが特徴です。
証券・投資:真の取引者を隠す“あやしさ”(3つの視点)
- 名義のあやしさ…架空名義・借名での株式・債券の売買/事業実体のない法人/名義や生年月日を変えた複数口座(なりすまし)
- 連絡先・場所のあやしさ…住所と違う送付先を希望/遠隔地の支店にわざわざ来て口座開設
- 非対面・IPのあやしさ…名義も住所も違うのに同一のIPアドレスからアクセス
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問題 1 / 16
正当な理由なく多数の口座を保有していることが判明した顧客(屋号付名義等を利用して異なる名義で多数の口座を保有している場合を含む)に係る入出金は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
合理的な理由なく多数の口座を持つこと自体が不自然で、屋号付名義などで名義を分けて多数の口座を保有するのは、真の口座保有者を隠している可能性があります。
問題 2 / 16
現金自動預払機(ATM)で複数のキャッシュカードを使って入出金を繰り返している顧客でも、操作に不審な点がみられなければ、架空名義・借名口座の疑いがあっても特に注意を払う必要はない。
架空名義口座や借名口座であるとの疑いが生じた口座を使用した入出金は、ATMの操作に不審な点がみられなくても注意が必要です。複数のキャッシュカードを使った繰り返しの入出金は、第三者が口座を管理している可能性があります。
問題 3 / 16
自宅や勤務先、通勤経路から当該支店で取引をする明らかな理由がない顧客でも、本人特定事項の確認に問題がなければ、特に注意を払う必要はない。
居住地や勤務地等に照らして当該支店で取引をする合理的な理由がない場合に該当する可能性があり、本人特定事項の確認とは別に注意が必要です。
問題 4 / 16
住所と異なる連絡先にキャッシュカードの送付を希望する顧客とのやりとりで、結果的に口座開設を断念した場合は、取引が成立していない(未遂)ため、その後の対応を検討する必要はない。
組織的犯罪処罰法では未遂も罰せられるため、顧客が口座開設や取引を断念した場合でも、疑わしい取引の届出の対象となる可能性があり、その後の対応を検討する必要があります。
問題 5 / 16
登録されたメールアドレスが、口座所有者と関連がないと思われるもの(別人や別法人が連想されるメールアドレス等)であったり、複数のアカウントで類似したパターンがみられたりする場合は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
口座所有者と関連のないメールアドレスや、複数のアカウントで類似したパターンのメールアドレスは、真の口座保有者を隠している可能性があり、注意が必要です。非対面取引で増えている着眼点です。
問題 6 / 16
非対面取引において、国内居住の顧客であれば、ログイン時のIPアドレスが国外であっても、その合理性を確認する必要はない。
国内居住の顧客であるにもかかわらず、ログイン時のIPアドレスが国外である、ブラウザ言語が外国語であるなどに合理性が認められない取引は、なりすまし等の可能性があり、注意が必要です。
問題 7 / 16
同一の携帯電話番号が、複数の口座や顧客の連絡先として登録されている場合は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
同一の携帯電話番号が複数の口座・顧客の連絡先として登録されているのは不自然で、第三者が複数の口座を管理している可能性があります。
問題 8 / 16
口座名義人である法人の事業実体がないとの疑いが生じた口座を使用した入出金は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
事業実体がないとの疑いがある法人の口座を使用した入出金は、真の口座保有者を隠している可能性があり、注意が必要です。本人確認書類がそろっていることと、事業の実体があることは別の問題です。
問題 9 / 16
非対面で証券取引口座を新規開設した3名の顧客のIPO(新規公開株)の需要申告が、すべて同じIPアドレスから発注されていた場合、なりすまし取引の疑いも考えられるため、注意を払う必要がある。
名義の異なる複数の顧客の取引が同一のIPアドレスから行われているのは不自然で、いずれかの顧客によるなりすまし取引などの可能性があり、注意が必要です。
問題 10 / 16
証券口座開設の法人顧客に取引関係文書を転送不要郵便で送ったところ返戻され、電話も常に留守番電話で代表者と連絡が取れず、登記住所がレンタルオフィスだったが、正式に登記された法人であれば取引相手として問題はない。
法人の事業実体がない疑いが高い状況であり、登記されているという理由だけで疑念を払拭することはできません。事業実体の確認が完了するまで取引制限を行うなどの対応を検討する必要があります。
問題 11 / 16
営業職員との対面取引が中心だった高齢の顧客の証券口座で、ある日を境にインターネット取引が頻繁に行われるようになり、確認の電話に毎回「長男」を名乗る人物が出て本人が電話に出ない場合、なりすまし取引の疑いも考えられるため、注意を払う必要がある。
取引の方法が急に変わり、本人と直接連絡が取れない状況は、本人以外の者による取引(なりすまし)の可能性があり、注意が必要です。
問題 12 / 16
自宅や勤務先、通勤経路から遠く離れた遠隔地の支店に自発的に訪問して新規の証券取引口座開設を申し込む顧客については、その支店で取引をする合理的な理由を確認するなど、注意を払う必要がある。
居住地や勤務地から離れた支店であえて取引をすることに合理的な理由がない場合は、真の取引者を隠している可能性があり、理由の確認など注意が必要です。
問題 13 / 16
証券取引では、架空名義や借名名義による取引であっても、犯収法上のハイリスク取引に該当しなければ、疑わしい取引に該当することはない。
犯収法上のハイリスク取引に該当しない場合でも、架空名義・借名やなりすましの疑いがあれば、疑わしい取引に該当することがあります。ハイリスク取引かどうかと、疑わしい取引かどうかは別の判断です。
問題 14 / 16
既存顧客のなりすまし調査では、住所や姓が異なっていても、IPアドレスが同一であれば、むしろなりすましの可能性は低いと判断してよい。
住所や姓が異なる、またはIPアドレスが同一である口座は、なりすましの可能性がむしろ高いと考えられ、特に慎重な確認が必要です。
問題 15 / 16
同一人物が、異なる氏名(異なるカナ氏名を含む)や生年月日で複数の口座開設や商品の申込みを行うなど、なりすましによる手続が疑われる場合は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
一人の人物が名義や生年月日を変えて複数の口座を作るのは、真の取引者を隠す典型的な手口で、注意が必要です。
問題 16 / 16
住所と異なる連絡先に取引報告書等の証書類の送付を希望する顧客に係る口座を使用した投資であっても、口座が本人名義であることが確認できていれば、注意を払う必要はない。
住所と異なる連絡先に証書類の送付を希望する顧客の口座を使用した投資は、真の取引者を隠している可能性があり、本人名義であっても注意が必要です。

第7章 疑わしい取引
疑わしい取引の参考事例(真の口座保有者・取引者の隠匿)
疑わしい取引の参考事例(真の口座保有者・取引者の隠匿)
問正解 / 16問中
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第7章⑦まとめ:疑わしい取引の参考事例(真の口座保有者・取引者の隠匿)
- 真の口座保有者の隠匿(預金)=架空名義・借名口座/事業実体のない法人の口座/屋号付名義等で多数の口座/当該支店で取引する合理的理由がない/同一のIPアドレス・メール・携帯番号 など。
- 真の取引者の隠匿(証券・投資)=架空名義・借名での株式・債券売買/同一人物が異名義・異生年月日で複数口座(なりすまし)/同一IPからの複数口座アクセス/遠隔地支店での自発的な口座開設 など。
- ATM操作が正常でも、登記があっても、本人名義でも“それだけ”で安心しない。事業実体・取引実態・連絡先の整合を確認する。
- 借名・架空名義は犯収法上のハイリスクに当たらなくても疑わしい取引に該当しうる。住所・姓が異なる/IPが同一はなりすましの可能性が高い。
- 口座の売買・譲渡は犯罪。ただし特定国籍の一律謝絶はNG(金融包摂)。入口・出口対策で犯罪利用と金融排除の双方を防ぐ。
【頻出ひっかけ】 ・ATM操作に不審な点がなければ借名でも安心 → ✕(操作が正常でも注意) ・口座開設を断念させたから対応不要 → ✕(未遂も罰する=届出対象になりうる) ・正式に登記された法人なら取引相手として問題なし → ✕(登記だけで実体は確認できない) ・借名・架空名義でもハイリスク取引でなければ疑わしくない → ✕(該当しうる) 試験、頑張ってください‼
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