「いつもより、現金が多いな」—— その小さな違和感が、疑わしい取引に気づく第一歩です。 金融庁の「疑わしい取引の参考事例」で、いちばん最初に挙げられているのが “現金の使用形態に着目した事例”。 なぜ現金がねらわれるのか、預金と保険でどんな取引に注意するのかを、 一問一答で確認していきましょう。
- 現金は資金の流れを追いにくく、あらゆる取引の中でも最もマネー・ローンダリングに悪用されやすい。だから「現金の使用形態に着目した事例」は参考事例の筆頭。
- 1回の取引をあえて複数に分け、形式的に敷居値を下回らせるストラクチャリング(分割取引)は、規制を免れる脱法行為として疑わしい取引に当たる。
- 「多額」「頻繁」に全国一律の数値基準はない。取引の状況・相手方・内容など個々の要素で判断する。
- 参考事例はあくまで目安。形式的に合致しても全てが届出対象とは限らず、合致しなくても疑わしいと判断すれば届出対象。
- 見合うかどうかは、顧客の属性・収入・資産・過去の取引額等から総合的に判断する。預金取扱金融機関も保険会社も、見合わない高額の現金取引や多量の少額通貨に注意する。
現金は、誰が・いつ・いくら動かしたのかを後から追いにくいため、あらゆる取引の中でも最もマネー・ローンダリングに悪用されやすいとされています。そのため金融庁の「疑わしい取引の参考事例」でも、現金の使用形態に着目した事例が先頭に挙げられています。
金融庁が公表している「疑わしい取引の参考事例」では、預金取扱金融機関について、現金の使用形態に着目した事例として次の取引が挙げられています。判断のものさしには、顧客の属性や過去の取引額等も含まれる点に注意しましょう(緑色で強調した部分が、より具体的になったポイントです)。
金融庁の参考事例:現金の使用形態(預金取扱金融機関)
- 顧客の属性・収入・資産・過去の取引額等に見合わない高額の現金(外貨を含む)または小切手による入出金(有価証券の売買・送金・両替を含む)。特に、送金や自己宛小切手によるのが相当なのに、あえて現金で入出金を行う取引
- 短期間のうちに頻繁に行われる取引で、現金・小切手による入出金の総額が多額の場合(敷居値を若干下回る取引が認められる場合も同様)
- 多量の少額通貨(外貨を含む)による入金または両替
- 顧客の属性や事業内容等に照らした、夜間金庫への多額の現金の預入れ、または急激な利用額の増加に係る取引
保険会社についても、金融庁の参考事例で次の取引が挙げられています。こちらも、契約者の属性や過去の取引額等に見合うかどうかが判断のポイントです。
金融庁の参考事例:現金の使用形態(保険会社)
- 契約者の属性・収入・資産・過去の取引額等に見合わない高額の保険料を、多額の現金または小切手で支払う契約者に係る取引
- 多額の保険金支払または保険料払戻であるにもかかわらず、現金または小切手による支払を求める顧客に係る取引
- 短期間のうちに行われる複数の保険契約に対する保険料の支払で、現金・小切手による支払総額が多額の場合(敷居値を若干下回る取引が認められる場合も同様)
- 多量の少額通貨(外貨を含む)により保険料が支払われる取引
「多額」「多量の少額通貨」「頻繁」などには、全国一律の金額・回数の基準はありません。取引の一般的な状況や相手方、取引内容などの個々の具体的な要素を考慮して、疑わしいレベルかどうかを判断します。ただし、現場が判断に迷わないよう、各金融機関が自社の基準(具体的な金額・回数など)をあらかじめ定めておくことが望ましいとされています。参考事例はあくまで目安であり、形式的に合致するものが全て疑わしい取引に該当するわけではなく、逆に合致しない取引であっても、金融機関が疑わしいと判断したものは届出の対象になります。
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問題 1 / 16
顧客の属性、収入、資産、過去の取引額等に見合わない高額な取引で、送金や自己宛小切手によるのが相当と認められるにもかかわらず、あえて現金で入出金を行う取引は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
見合わない高額の現金取引や、送金・自己宛小切手で足りるのにあえて現金を使う取引は、現金の使用形態に着目した代表的な事例です。見合うかどうかは、顧客の属性・収入・資産・過去の取引額等から総合的に見ます。現金は資金の流れを追いにくく、悪用されやすいため注意が必要です。
問題 2 / 16
1回の取引をあえて複数回に分割し、1回あたりの金額を形式的に敷居値より下げれば、規制の対象から外れるため、疑わしい取引として注意を払う必要はない。
1回の取引をあえて複数に分割して、形式的に敷居値を下回らせる手口はストラクチャリングと呼ばれ、規制を免れるための脱法的な取引と考えられます。形式的に敷居値を下回っていても、疑わしい取引に該当する可能性があるため注意が必要です。
問題 3 / 16
多量の少額通貨(外貨を含む)により入金または両替を行う取引は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
多量の少額通貨による入金・両替は、現金の使用形態に着目した事例の一つです。少額の通貨を大量に持ち込む取引には、資金の出どころに不自然さがないか注意します。
問題 4 / 16
現金による取引は金額や日付が必ず記録に残るため、マネー・ローンダリングに悪用される可能性は低く、特段の注意は必要ない。
現金取引は、資金の動きを後から追跡しにくいため、あらゆる取引の中でも最もマネー・ローンダリングに悪用されやすいとされています。記録に残ること自体が安全を意味するわけではなく、十分な注意が必要です。
問題 5 / 16
顧客の属性や事業内容等に照らし、夜間金庫への多額の現金の預入れや、急激な利用額の増加に係る取引は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
夜間金庫への多額の現金預入れや、利用額の急激な増加は、現金の使用形態に着目した事例に挙げられています。事業の規模や内容に見合わない動きがないか確認します。
問題 6 / 16
「多額」や「頻繁」に当たるかどうかは、金融庁が全国一律の金額・回数の基準を定めているため、その数値を超えたかどうかだけで機械的に判断すればよい。
「多額」「頻繁」などに全国一律の基準はありません。取引の一般的な状況や相手方、取引内容などの個々の具体的な要素を考慮して、疑わしいレベルかどうかを判断します。
問題 7 / 16
短期間のうちに頻繁に行われる取引で、現金または小切手による入出金の総額が多額である取引は、敷居値を若干下回る取引が認められる場合も含めて、注意を払う必要がある。
短期間に頻繁な現金・小切手の入出金で総額が多額になる取引は、たとえ1件ごとが敷居値を若干下回っていても、現金の使用形態に着目した事例として注意が必要です。
問題 8 / 16
金融庁の参考事例に形式的に合致する取引は、その時点で全て疑わしい取引に該当するため、必ず届出を行わなければならない。
参考事例はあくまで目安です。形式的に合致しても全てが疑わしい取引に該当するわけではなく、逆に合致しなくても金融機関が疑わしいと判断すれば届出の対象になります。お客さまの属性や取引状況を総合的に勘案して判断します。
問題 9 / 16
5万円の保険料が100円玉500枚で支払われた取引は、多量の少額通貨による支払として、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
多量の少額通貨(外貨を含む)により保険料が支払われる取引は、保険会社の現金の使用形態に着目した事例の一つです。少額通貨を大量に用いる支払には注意します。
問題 10 / 16
1億円の保険金の支払に際し、顧客から指定の金融機関口座への振込による支払を求められた取引は、それ自体が現金の使用形態に着目した参考事例に該当する。
現金の使用形態に着目した事例として挙げられているのは、多額の保険金支払や払戻にもかかわらず現金または小切手による支払を求める取引です。口座振込による支払を求めること自体は、この事例には当たりません。
問題 11 / 16
多額の保険金支払または保険料払戻であるにもかかわらず、現金または小切手による支払を求める顧客に係る取引は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
高額の支払であるのに、あえて追跡しにくい現金や小切手での受け取りを求める取引は、資金の出どころや目的に不自然さがある可能性があり、注意が必要です。
問題 12 / 16
年収300万円で特にめぼしい資産もない契約者が、毎月30万円の保険料を現金で支払っている取引は、疑わしい取引に該当する可能性のある取引として注意を払う必要がある。
契約者の属性・収入・資産・過去の取引額等に見合わない高額の保険料を現金で支払う取引は、保険会社の現金の使用形態に着目した代表的な事例です。
問題 13 / 16
1カ月間で同一の年金保険契約に計5件加入した契約者が、1件当たり180万円(合計900万円)をすべて現金で支払ったが、1件当たり200万円を超えていない以上、疑わしい取引として注意を払う必要はない。
1回の取引をあえて複数に分割し、形式的に敷居値を下回らせる手口はストラクチャリングと考えられます。1件あたりが敷居値を下回っていても、合計額が多額になる現金支払には注意が必要です。
問題 14 / 16
保険会社の「現金の使用形態に着目した事例」は、保険金の受取の場面に限られ、保険料の支払の場面における現金取引は対象とならない。
保険会社の事例には、収入・資産に見合わない高額の保険料を現金で支払う取引など、保険料の支払の場面も含まれます。受取の場面に限られるわけではありません。
問題 15 / 16
短期間のうちに行われる複数の保険契約に対する保険料の支払で、現金または小切手による支払総額が多額である取引は、敷居値を若干下回る取引が認められる場合も含めて、注意を払う必要がある。
短期間に複数の保険契約を結び、現金・小切手による支払の総額が多額になる取引は、1件ごとが敷居値を若干下回っていても、現金の使用形態に着目した事例として注意が必要です。
問題 16 / 16
保険商品は現金で取引されることが多いため、現金による高額の保険料支払はごく通常の取引であり、預金取引に比べてマネー・ローンダリングのリスクは低いと考えてよい。
現金取引は取引の種類を問わず最もマネー・ローンダリングに悪用されやすいとされています。保険だから現金の高額支払は当然・低リスク、という考え方は適切ではありません。

第7章 疑わしい取引
疑わしい取引の参考事例(現金の使用形態)
疑わしい取引の参考事例(現金の使用形態)
問正解 / 16問中
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第7章⑥まとめ:疑わしい取引の参考事例(現金の使用形態)
- 預金取扱金融機関の現金事例=顧客の属性・収入・資産・過去の取引額等に見合わない高額の現金入出金/短期間・頻繁で総額が多額(敷居値を若干下回る場合も)/多量の少額通貨の入金・両替/夜間金庫への多額の預入れ・急激な利用額の増加。
- 保険会社の現金事例=契約者の属性・収入・資産・過去の取引額等に見合わない高額保険料の現金支払/多額の保険金・払戻なのに現金・小切手での支払を求める/短期間の複数契約で支払総額が多額/多量の少額通貨での保険料支払。
- ストラクチャリング=1回の取引をあえて複数に分割し、形式的に敷居値を下回らせる脱法。分割しても疑わしい取引に該当しうる。
- 「多額」「頻繁」は一律基準なし・個別判断。参考事例は目安であって機械的な合否判定表ではない。
- 金融庁の参考事例自体も折々に改訂される。金額や事例の基準は最新の参考事例を確認する。
【頻出ひっかけ】 ・分割して1回を敷居値より下げれば対象外 → ✕(ストラクチャリングで疑わしい取引) ・「多額」「頻繁」に全国一律の基準がある → ✕(基準はなく個別判断) ・参考事例に形式的に合致すれば全て届出 → ✕(あくまで目安) ・保険金の“振込”を求められた → 現金事例には当たらない(現金・小切手を求める場合が事例) 試験、頑張ってください‼
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