会社が発行する株式や社債、そしてスマホひとつで完結する非対面の取引—— どちらも、真の関与者や資金の出どころが見えにくくなりがちです。 「有価証券の発行」と、2025年8月に事例が加わった「非対面取引」。 2つの視点を一問一答で確認しましょう。
- 有価証券の発行では、表に出ない真の関与者や資金の実態に注目。役員・大口債権者・主要取引先・アレンジャー等に国内外の犯罪組織の関与が疑われる発行は注意(「外国人を除く」といった限定はない)。
- 使途と業務の関係が不自然/極端な増資規模/表面上の経営者と別に経営を握る者/複数の割当先が実質同一のファンド——などが有価証券発行のレッドフラグ。
- 非対面取引(インターネット取引等)では、アクセス環境(IPアドレス・端末)に注目。同一の口座へ多数の環境から接続、名義・住所が違うのに同一IP、国内居住なのにIPが国外、などが注意対象。
- オンラインカジノ関係者が顧客になりすましてアクセスする取引や、口座の不正利用・売買が、2025年8月の事例改訂で強く意識されている。
- メールアドレスや電話番号・認証方法の不自然な変更・共有も、第三者による操作を疑う手がかり。パスワードを一度変えただけでは疑わしい取引ではない。
会社が株式や社債を発行する場面では、表に出ない真の関与者や、集めた資金の実態が見えにくくなりがちです。金融庁の「疑わしい取引の参考事例」では、有価証券の発行関連業務について、次のような取引が挙げられています。
有価証券の発行のあやしさ(こんな取引に注意)
- あやしい関与者…役員・大口債権者・主要取引先・常任代理人・アレンジャーといった関係者に、暴力団や国内外の犯罪組織とつながる疑いのある人物が関わる発行(「外国人を除く」といった限定はない)
- 資金と実態が不自然…集めた資金の使いみちが事業内容と結びつかない/登記上の経営者とは別に実権を握る者がいる/投資者や引受け原資が不透明なファンドが割当先
- 規模・変化が不自然…実態に見合わない極端な増資/事業規模に反して短期間に繰り返す大規模発行/役員や会計監査人がたびたび交代する、辞任・解任が不自然
- 割当先が実質同一…形のうえでは複数でも実際は同じ相手やファンドと疑われる第三者割当増資/対策に非協力的な国・地域を登記先とするファンドが割当先
インターネットバンキングなど、対面せずに完結する取引が広がるにつれ、本人になりすました第三者が口座を動かすリスクが高まっています。金融庁は2025年8月に参考事例を改訂し、非対面取引に着目した事例を大きく充実させました。カギになるのは、接続してくるアクセス環境(IPアドレスや端末)の不自然さです。
非対面取引のあやしさ(こんな取引に注意)
- アクセス環境の不一致…一つの口座へ多数の機器や回線(IPアドレス・端末等)から接続がある/名義も住所も違う利用者どうしなのに同じIPアドレスからアクセス
- 所在地の矛盾…国内在住のはずがログイン時のIPアドレスは国外・ブラウザ言語が外国語/取引時確認で得た住所と操作端末のIPアドレスが食い違う口座開設
- なりすまし・不正利用…同じ機器や回線から複数の利用者の口座にログインし、オンラインカジノ関係者が本人になりすます/不正利用が確認された口座と同じ環境からのアクセス
- 登録情報の不自然さ…本人・法人と関連のないメールアドレスや、複数アカウントで似たパターンのメール/連絡先や認証方法をたびたび、あるいは同時に変更
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問題 1 / 16
役員や大口債権者、主要取引先、資金調達をまとめるアレンジャーなどの関係者に、犯罪組織とのつながりが疑われる人物がいる有価証券の発行について、その人物が外国人である場合は事例の対象から外してよい。
暴力団員や暴力団関係者、国内外の犯罪組織に関わる疑いのある人物が関与する発行は、相手が外国人かどうかを問わず注意の対象です。「外国人を除く」といった例外はありません。
問題 2 / 16
会社が有価証券を発行して資金を集めようとしているのに、その資金の使いみちが会社の事業内容と結びつかず不自然な場合、この発行は疑わしい取引として注意すべき対象になる。
集めたお金の使いみちと、その会社が営む事業とがかみ合わないのは、発行を装って資金を動かしている可能性があり、注意が必要です。
問題 3 / 16
それまでの発行済株式数や売上高、資産の規模と比べて、増資の規模が極端に大きい有価証券の発行は、実態に見合わず注意を払うべきである。
これまでの株式数や売上・資産の大きさに比べて、あまりに大きな増資は、実態にそぐわず、資金の受け皿にされている可能性があり、注意が必要です。
問題 4 / 16
登記上の経営者とは別に、実際に経営を動かしている人物がいるのではないかと疑われる会社が有価証券を発行する場合は、注意を払うべき対象になる。
登記上の経営者の裏に実権を握る人物がいる疑いがあるのは、真の関与者を隠している可能性があり、注意が必要です。
問題 5 / 16
割当先が形のうえでは複数に見えても、実際には同じ相手やファンドではないかと疑われる第三者割当増資は、疑わしい取引として注意を払う必要がある。
割当先が見かけ上は複数でも実質的に同じと疑われるのは、資金の出し手や真の関与者を分かりにくくしている可能性があり、注意が必要です。
問題 6 / 16
役員や会計監査人がたびたび交代する会社であっても、交代は経営上の判断にすぎないため、有価証券の発行に着目した事例には当たらない。
役員や会計監査人が頻繁に入れ替わる会社、または辞任・解任が不自然な形で行われた会社の発行は、事例として挙げられており、注意が必要です。
問題 7 / 16
マネー・ローンダリング対策に非協力的な国や地域を登記先とするファンドが割当先であっても、国内で適法に登記された発行であれば、注意すべき事例には当たらない。
マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域や不正薬物の仕出国・地域を登記先や拠点とするファンドが割当先の第三者割当増資は、事例として挙げられており、注意が必要です。
問題 8 / 16
発行する会社の事業内容や規模に見合わず、短い期間に大きな規模の有価証券発行が繰り返される場合でも、必要な届出さえ済ませていれば、疑わしい取引として検討する必要はない。
会社の事業内容や規模に反して、短期間に繰り返される大規模な発行は、事例として挙げられており、届出をしたかどうかにかかわらず、疑わしい取引に当たるか検討する必要があります。
問題 9 / 16
登録されているメールアドレスを見て、その持ち主本人や勤め先の法人がすぐに思い浮かぶ場合には、疑わしい取引として注意を払う必要がある。
注意が必要なのは、口座の持ち主と関係のなさそうなメールアドレス(別人や別法人が思い浮かぶもの等)や、複数のアカウントで似たパターンが見られる場合などです。本人や勤め先が自然に連想できること自体が事例なのではありません。
問題 10 / 16
ネット取引で、利用者がパスワードを一度だけ変更したという事実そのものが、疑わしい取引に当たる。
注意が必要なのは、氏名・連絡先・電話番号・住所・メールアドレス等をたびたび、あるいは同時に変更する取引などです。パスワードを一度変えたこと自体が、必ず疑わしい取引に当たるわけではありません。
問題 11 / 16
対面によらない取引で、一つの口座に対し、いつも変わらない同じ機器や回線から接続がある場合は、疑わしい取引として注意を払う必要がある。
事例として挙げられているのは、一つの口座に「多数の」機器や回線(IPアドレス・端末等)から接続がある場合です。ふだんと同じ環境からの接続そのものが事例なのではありません。
問題 12 / 16
対面によらない取引で、オンラインカジノの関係者が利用者になりすまし、同じ機器や回線を使って複数の人の口座に次々とログインしている疑いがある場合は、注意を払う必要がある。
同じ環境から複数の顧客の口座にログインがあるのは、一人の第三者がまとめて他人の口座を操作している可能性があり、オンラインカジノ関係者によるなりすましが疑われる取引として注意が必要です。
問題 13 / 16
別々の利用者が、名義も住所も別であるにもかかわらず、アクセス元のIPアドレスが同一になっている取引は、注意を払う必要がある。
名義も住所も異なる別々の顧客のはずなのに、同じ場所(IPアドレス)からアクセスされているのは、実際は同一の第三者が操作している可能性があり、注意が必要です。
問題 14 / 16
日本国内に住んでいるはずの利用者なのに、ログインしたときのIPアドレスが国外だったり画面の表示言語が外国語だったりして、その理由に説明がつかない場合は、注意を払う必要がある。
国内に住んでいるはずの顧客なのに、接続元が国外だったり表示言語が外国語だったりして、その理由に合理性がないのは、第三者による操作などが疑われ、注意が必要です。
問題 15 / 16
口座開設の際、取引時確認で得た住所と、実際に操作している端末のIPアドレスなどが食い違っていても、本人確認書類がそろってさえいれば、注意を払う必要はない。
取引時確認で得た住所と、操作している端末(パソコン等)のIPアドレスなどが食い違う口座開設は、事例として挙げられており、本人確認書類がそろっていても注意が必要です。
問題 16 / 16
金融庁の「疑わしい取引の参考事例」は2025年8月に見直され、危険度調査書で高リスクとされた取引や、近ごろ目立つ非対面での詐欺・口座の不正利用や売買・オンラインカジノなどの動きを反映した事例が加わった。
この見直しは、「犯罪収益移転危険度調査書」で高いリスクがあるとされた取引や、足元の非対面での詐欺・口座の不正利用や売買・オンラインカジノ・貸金庫利用等の犯罪傾向を踏まえたものです。

第7章 疑わしい取引
疑わしい取引の参考事例(有価証券の発行・非対面取引)
疑わしい取引の参考事例(有価証券の発行・非対面取引)
問正解 / 16問中
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第7章⑩まとめ:疑わしい取引の参考事例(有価証券の発行・非対面取引)
- 有価証券の発行のあやしさ=犯罪組織の関与が疑われる関係者(国内外を問わない)/使途と業務が不自然/極端な増資規模/表面上の経営者と別の実権者/複数割当先が実質同一のファンド/役員・会計監査人の不自然な交代/実体・原資が不透明なファンドが割当先。
- 「外国人を除く」「必要な届出を果たせば検討不要」などの限定・言い訳は誤り。形式ではなく実質を見て判断する。
- 非対面取引のあやしさ=アクセス環境(IPアドレス・端末)の不一致。同一口座へ多数の環境から接続/名義・住所が違うのに同一IP/国内居住なのにIPが国外・ブラウザが外国語/取引時確認の住所と操作パソコンのIPが異なる口座開設。
- オンラインカジノ関係者のなりすましアクセスや、口座の不正利用・売買が、2025年8月改訂の背景。「犯罪収益移転危険度調査書」で高リスクとされた取引や足元の詐欺傾向を反映している。
- パスワードを一度変えただけでは疑わしい取引ではない。頻繁・複合的な変更や、本人・法人と無関係なメールアドレス等が手がかり。時点で変わる話は「2025年8月改訂」を意識する。
【頻出ひっかけ】 ・犯罪組織の関与でも「外国人を除く」→ ✕(国内外の犯罪組織が対象) ・役員・会計監査人が頻繁に入れ替わるのは経営判断で対象外 → ✕(不自然な交代は事例) ・メールから本人・所属法人が連想できると疑わしい → ✕(別人・別法人が連想される等が対象) ・同一の口座に「同一」のアクセス環境から接続 → ✕(「多数」のアクセス環境が事例) 試験、頑張ってください‼
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