FATFの基準を守らないと、金融機関はどうなるのか。FATFに罰金を科す権限はあるのか。「グレーリスト」に載るとは、何が起きることなのか。 この記事は、FATF基準を守らない場合の影響(グレーリスト・ブラックリスト)と日本が負うリスクを整理して、一問一答で確認する構成です(法令基準日2026年7月1日対応)。 最大のポイントは「FATFは金融機関に直接 制裁できない/審査の対象は『国』」。下の「する/しない対比表」で取り違えを防ぎましょう。 これまで約30年、銀行でマネロン対策と向き合ってきた私が(本試験合格済み)、試験に出る要点を一問一答にまとめました。ひっかけの多いテーマなので、間違えたところこそ繰り返してください。
- FATFは基準を守らない金融機関等に制裁を科す権限を持っていない(直接の制裁・罰金はない)。影響は国内の仕組み経由=役員の善管注意義務違反(代表訴訟・賠償)/国内法抵触で金融当局の業務停止命令・業務改善命令等の行政処分/コルレス契約の解除→海外送金の停止・制限
- FATF自身は制裁しないが、国外(海外)の金融当局(米国・英国等)はマネー・ローンダリング対策の不備を理由に制裁金・罰金を科すことがある(日本の金融機関に科された事例もある)
- FATF対応が不十分なときに日本が負うリスク=国際的な信認の低下と海外取引の支障(実害)/コルレス契約の解除・制限・デューディリジェンスの厳格化/ハイリスク国として国名公表
- FATF審査の対象は「国」であり金融機関ではない(日本のすべての金融機関等が審査対象になるわけではない)
- 警察庁「FATF勧告に対応する必要性」=日本は遵守の取組みが最も遅れた国の一つ。課題=顧客管理の強化・テロリストの資産凍結
- FATFが「する」=国への相互審査・継続的なフォローアップ・ハイリスク国の国名公表。FATFが「しない」=国債の格付引き下げ勧告・政府への法令改正の直接指導・各国への取引自粛通達・金融機関への直接処分
- FATF対応が不十分だと、2021年8月の第4次対日相互審査で日本は強化フォローアップ対象(法令等整備40項目中NC1・PC10/有効性11項目中M8)→FATFから継続的な指摘を受ける可能性
FATF基準を守らないと起きること(影響の経路)
- FATFが直接 制裁・罰金を科すことはない(FATFに制裁権限なし)
- 国内法に抵触する/不適切な業務運営と認められると、金融当局から業務停止命令・業務改善命令などの行政処分を受ける可能性(=処分するのは国内当局)
- 国外(海外)の金融当局(米国・英国等)から、マネー・ローンダリング対策の不備(イラン・スーダン等への送金関連など)を理由に制裁金・罰金を科される可能性(日本の金融機関に科された事例もある)
- 役員が善管注意義務違反を問われ、株主代表訴訟・会員代表訴訟や役員個人の賠償責任が生じる可能性
- コルレス契約が解除されるなどして海外送金の停止・制限を受け、決済・送金機能に影響
罰するのはFATFではなく、国内当局・海外当局・株主・取引相手です。FATF自身に制裁権限がないという一点を外さないでください。
日本が負う主なリスク
- 国際的な信認の低下+個別金融機関の海外取引・国際金融取引・顧客支援に支障(実害)
- コルレス契約の解除・制限、コルレス取引時のデューディリジェンスの厳格化
- FATF審査の対象は「国」=日本のすべての金融機関等が審査対象になるわけではない
- マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策のハイリスク国として国名公表されるリスク
- 警察庁「FATF勧告に対応する必要性」=日本は遵守の取組みが最も遅れた国の一つ。課題=顧客管理の強化・テロリストの資産凍結
審査されるのは国であって、個々の金融機関ではありません。ただし国の信認が落ちれば、海外送金という実務に跳ね返ってきます。
FATFが公表する2つのリスト(金融庁・財務省の表記)
- 行動要請対象の高リスク国・地域(いわゆるブラック・リスト)=対策体制に重大な戦略上の欠陥があるとされた国・地域。各国に対抗措置または厳格な顧客管理措置の適用が求められる
- 強化モニタリング対象国・地域(いわゆるグレー・リスト)=欠陥の改善に取り組むことを約束し、FATFの監視下に置かれている国・地域
- どちらも年3回の全体会合(プレナリー)ごとに見直しされ、掲載される国・地域は入れ替わる(直近=2026年6月17〜19日の全体会合で採択・6月19日付公表)
- 試験で問われるのは「日本が対策不十分なハイリスク国として国名公表されるリスク」。日本はFATFの加盟国で、第4次審査による重点(強化)フォローアップはこの公表リストとは別の枠組み
- 最新の掲載国・地域は、下の公式リンク(原文と仮訳)で確認してください
ニュースのブラックリスト・グレーリストは、正式には行動要請対象の高リスク国・地域と強化モニタリング対象国・地域。呼び名が違うだけで同じものです。
FATFが行うのは国への相互審査と継続的なフォローアップ。下の「しない」側がそのまま頻出ひっかけです。
| FATFが「する」こと | FATFが「しない」こと(取り違え注意) |
|---|---|
| ・国を対象とした相互審査 ・国への継続的なフォローアップ・指摘 ・ハイリスク国の国名公表 ・(国を通じた)改善の要請 | ・金融機関への直接の制裁・罰金 ・個別金融機関への業務改善命令などの行政処分(=国内の金融当局の役割) ・国債の格付引き下げを格付会社へ勧告 ・政府・金融庁への法令改正の直接指導 ・各国政府への「取引を控えよ」との通達 |
FATFがするのは国を審査してフォローすること。しないのは金融機関を直接罰すること。迷ったらこの線引きに戻ってください。
「国」に対する強化フォローアップの段階
- 金融機関への直接処分とは別の話です
- FATFが国に対して行う強化フォローアップには段階がある=①FATF議長からのレター送付 ②ハイレベル使節団の派遣 ③勧告21の適用 ④FATFメンバーシップの一時停止・剥奪
- つまり「国」への手段としては最終的にメンバーシップの一時停止・剥奪まであり得る。ただしこれは個別の金融機関への直接の制裁・処分とは別(金融機関への直接制裁はFATFは行わない)
国に対しては、最終的に加盟資格の停止・剥奪まであり得ます。ただしそれは国への手段であって、金融機関への直接処分ではありません。
⚠ ひっかけに注意
- FATFは金融機関に直接 制裁・業務改善命令をしない(行政処分をするのは国内の金融当局)
- 審査の対象は「国」であって、日本のすべての金融機関等が審査されるわけではない
- FATFがしないこと=国債の格付引き下げ勧告/政府への法令改正の直接指導/各国への取引自粛通達/金融機関への直接処分
〇か✖をタップ!
正解の場合は青で表示されます
不正解の場合は赤で表示されます
24問解くと結果が表示されます。
もう一度チャレンジを押すと、出題の順番が入れ替わります。
問題 1 / 24
FATFの基準に金融機関等が従わなかったとき、その金融機関等はFATF自体から直接に処分され、罰金を科されることになっている。
FATFは、基準に違反した・守らない金融機関等に対して制裁を科す権限を持っていません。「直接FATFから制裁・罰金」が誤りです。
問題 2 / 24
FATFの基準を金融機関等が守らなかった結果として国内法に触れる事態になれば、業務運営が不適切だとして金融当局から業務改善命令等の行政処分を受けることがありうる。
行政処分を行うのは国内の金融当局です。国内法に抵触すれば業務改善命令などを受ける可能性があります。
問題 3 / 24
FATFの基準を金融機関等が守らなかった場合、その役員が善管注意義務違反に問われ、株主代表訴訟を提起されたり個人として賠償責任を負ったりする可能性がある。
役員の善管注意義務違反による株主代表訴訟・会員代表訴訟や、役員個人が賠償責任を負う可能性があります。
問題 4 / 24
FATFの基準を金融機関等が守らない結果、コルレス契約の解除等が生じて海外送金が停止・制限され、決済・送金の機能に支障が出ることがある。
コルレス契約の解除等により海外送金が停止・制限され、決済・送金機能に影響が及ぶ可能性があります。
問題 5 / 24
FATFの基準に金融機関等が違反した場合には、FATFがその金融機関等に対して自ら直接、業務改善命令などの行政処分を科すことになっている。
業務改善命令などの行政処分を行うのは国内の金融当局です。FATFは金融機関に直接 処分を行う権限を持ちません。
問題 6 / 24
コルレス契約とは、国内の銀行と海外の銀行との間で締結される契約であり、手形の取立て委任や送金の支払委任、信用状の通知・確認といった為替関連の業務を相互に代行し合う取決めをいう。
コルレス契約は外国銀行との為替業務の代行に関する契約です。解除されると海外送金に影響します。
問題 7 / 24
FATF勧告は法的拘束力のある国際法であり、これを守らない金融機関等は国際裁判所で処罰される。
FATF勧告に法的拘束力はなく(事実上の国際標準)、国際裁判所で金融機関が処罰される仕組みもありません。
問題 8 / 24
役員の善管注意義務違反を理由に提起されうる訴訟は株主代表訴訟に限られ、会員代表訴訟が提起されることはない。
株主代表訴訟だけでなく、協同組織金融機関等では会員代表訴訟が提起される可能性もあります。
問題 9 / 24
日本のFATF対応が不十分な場合には、日本の金融に対する国際的な信認が下がるとともに、各金融機関の海外取引・国際金融取引や顧客の国際取引支援に支障をきたす実害が生じるおそれがある。
国際的な信認の低下に加え、個別金融機関の海外取引・国際金融取引に支障が生じる実害のリスクがあります。
問題 10 / 24
日本のFATF対応が不十分であれば、各金融機関はコルレス契約を解除されたりコルレス取引を制限されたりするほか、コルレス取引時のデューディリジェンスが厳格化されるといった負担を強いられるおそれがある。
コルレス契約の解除・制限や、コルレス取引時のデューディリジェンスの厳格化などが強いられるリスクがあります。
問題 11 / 24
日本のFATF対応が不十分な場合には、国内に本社を置く金融機関等はすべて例外なくFATFの審査対象になってしまう。
FATF審査の対象は「国」であり、金融機関ではありません。過去にすべての金融機関等が審査対象となった事例もありません。
問題 12 / 24
日本のFATFへの対応が不十分であると、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与への対策が不十分なハイリスク国として、FATFから国名が公表されるおそれがある。
対策が不十分なハイリスク国として、FATFより国名公表されるリスクがあります。
問題 13 / 24
警察庁「FATF勧告に対応する必要性」では、日本のFATF勧告遵守の取組みは主要国の中で最も進んでいる、と評価された。
実際には、日本は遵守の取組みについて最も遅れた国の一つであると言及されています。課題として「顧客管理の強化」「テロリストの資産凍結」が挙げられました。
問題 14 / 24
金融機関がFATFの基準を守らない場合に制裁金・罰金を科されることがあるとしても、それはFATF自身によるものに限られ、国外(海外)の金融当局が制裁金を科すことはない。
FATF自身は金融機関に制裁を科しませんが、国外(海外)の金融当局(米国・英国等)が、マネー・ローンダリング対策の不備を理由に制裁金・罰金を科す可能性があります(日本の金融機関に科された事例もあります)。
問題 15 / 24
警察庁「FATF勧告に対応する必要性」では、日本の課題として「顧客管理の強化」「テロリストの資産凍結」が挙げられている。
法整備がなされない場合は、ハイリスク国として国名公表される可能性が高いとの懸念が示されています。
問題 16 / 24
FATFがハイリスク国として国名を公表するのは、実際にテロ事件が発生した国に限られる。
マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策が不十分なハイリスク国が対象であり、テロ事件の発生は要件ではありません。
問題 17 / 24
日本のFATF対応が不十分であれば、日本政府に対してFATFから主要な項目について継続的にフォローアップの指摘を受けることがある。
日本は強化フォローアップの対象であり、FATFから主要項目について継続的な指摘を受ける可能性があります。
問題 18 / 24
日本のFATF対応が不十分な場合、FATFは世界各国の格付会社に働きかけ、日本国債の格付けを引き下げるよう勧告することがある。
FATFが各国の格付会社に対して、日本の国債の格付を下げるよう勧告することはありません。
問題 19 / 24
日本のFATF対応が不十分な場合、FATFが日本政府や金融庁等に直接働きかけて、法令改正の指導を行うことがある。
FATFが日本政府や金融庁等に対して、法令改正などの指導を直接的に行うことはありません。
問題 20 / 24
日本のFATF対応が不十分な場合、FATFは世界各国の政府宛てに、日本との金融取引を差し控えるようにとの通達を発することがある。
FATFが各国政府に対して、日本との金融取引を控えるよう通達を出すことはありません。
問題 21 / 24
2021年8月に公表されたFATF第4次対日相互審査の報告書では、法令等の整備状況に関する40項目の評価のうち、日本は不履行(NC)が1項目、一部履行(PC)が10項目という結果だった。
有効性審査でも11項目中8項目で中程度(M)と評価され、日本は強化フォローアップの対象となりました。
問題 22 / 24
FATFの指摘や審査は「国」に対して行われるものであり、個別の金融機関への直接の処分とは異なる。
FATFの相互審査・フォローアップの対象は国です。個別金融機関への直接の制裁・処分は行いません。
問題 23 / 24
日本のFATF対応が不十分な場合、FATFが職員を日本の各金融機関に常駐させて直接に監督を行うことになる。
FATFが金融機関に職員を常駐させて直接監督することはありません。FATFが行うのは国への相互審査・継続的なフォローアップです。
問題 24 / 24
FATF対応が不十分であった場合に日本が受けるのは、強化フォローアップによるFATFからの継続的な指摘であり、罰則の適用ではない。
日本は強化フォローアップの対象として継続的な指摘を受ける立場にあり、FATFが罰則を科すわけではありません。

第2章 FATF
FATFの基準を守らない場合の影響・日本が負うリスク
FATFの基準を守らない場合の影響・日本が負うリスク
問正解 / 24問中
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第2章④まとめ:FATFの基準を守らない場合の影響・日本が負うリスク
- FATFは金融機関等に制裁を科す権限を持たない。影響は国内経由=金融当局の業務停止命令・業務改善命令等/役員の善管注意義務違反/コルレス契約の解除。FATFは制裁しないが国外(海外)の金融当局(米英)は制裁金を科すことがある
- 日本が負うリスク=国際的な信認の低下・海外取引の支障/コルレス制限・デューディリジェンス厳格化/ハイリスク国として国名公表
- FATF審査の対象は「国」(すべての金融機関等が審査対象になるわけではない)。警察庁=日本は最も遅れた国の一つ・課題は顧客管理の強化とテロリストの資産凍結
- FATFが「しない」=格付引き下げ勧告・政府への法令改正の直接指導・各国への取引自粛通達・金融機関への直接処分。「する」=国への相互審査・継続的フォローアップ・国名公表
- FATF対応が不十分だと、第4次対日相互審査(2021年)で強化フォローアップ対象となり、継続的な指摘を受ける可能性
「FATFは金融機関に直接 制裁・業務改善命令はしない(行政処分は国内の金融当局)」「審査の対象は『国』(すべての金融機関ではない)」「国債の格付引き下げ勧告・各国への取引自粛通達もしない」。この3つが頻出ひっかけです! 試験、頑張ってください‼
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