匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)は、2024年から犯罪収益移転危険度調査書の分析対象に加わった新しい犯行主体です。 この記事は、検挙事例のデータとトクリュウの特徴を整理してから、一問一答に進む構成です。 これまで約30年、銀行でマネロン対策と向き合ってきた私が(本試験合格済み)、試験に出る要点を一問一答にまとめました。新しく加わったテーマなので、ここで一度固めておいてください。 数字は「令和7年 犯罪収益移転危険度調査書」などの公式資料で確認し、法令基準日2026年7月1日にあわせています。
- マネー・ローンダリング事犯の検挙事例では、前提犯罪は詐欺が最多(1,050件)、悪用された取引は内国為替取引が最多(1,128件)。
前払式支払手段・暗号資産・資金移動サービスなど決済手段の多様化で悪用が広がる。 - 主な犯行主体は、暴力団・匿名流動型犯罪グループ・来日外国人犯罪グループなど。一つに限られない。
- 匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)は2024年から危険度調査書の分析対象に。
特徴は中核的人物の匿名化と犯罪実行者の流動化(闇バイトで実行役を募集)、多様な資金獲得活動。 - 主な資金源は詐欺。架空・他人名義口座やコインロッカーを使った手口がみられ、巧妙にマネー・ローンダリングを行う。
| マネー・ローンダリング事犯の検挙事例(2022〜2024年) | 多い順(検挙事件数) |
|---|---|
| 前提犯罪 | ①詐欺(1,050件) ②窃盗(962件) ③電子計算機使用詐欺(553件) ※薬物事犯は67件と少ない |
| 悪用された取引 | ①内国為替取引(1,128件) ②現金取引(270件) ③クレジットカード(179件) |
マネー・ローンダリングの入口は薬物ではなく詐欺や窃盗で、使われる場は振込などの内国為替取引が飛び抜けて多い。この2点が数字の要点です。
数字はこう読む:なぜ「詐欺」と「内国為替取引」が最多になるのか
- マネー・ローンダリングは、①犯罪でお金を得る → ②その出所を分からなくする、の2段階でできています。表の「前提犯罪」は①のほう、「悪用された取引」は②のほうを数えたものです。同じ事件を別の角度から数えている、と考えると混乱しません
- 前提犯罪の最多が詐欺(1,050件)なのは、特殊詐欺やSNSを使った投資・ロマンス詐欺のように、被害者自身に口座へ振り込ませる手口が中心だからです。犯人の手元には、はじめから口座に入った状態のお金が生まれます
- だからこそ、悪用された取引の最多も内国為替取引(1,128件)=国内の振込・送金になります。すでに口座にあるお金は、そのまま次の口座へ動かすのがいちばん早いからです。前提犯罪の1位と悪用取引の1位は、同じ流れの入口と出口の関係にあります
- 薬物事犯が67件と少ないのは、「マネー・ローンダリング事犯として検挙された事例の前提犯罪」を数えた結果です。薬物犯罪そのものが少ないという意味ではありません。ここを取り違えないようにしてください
- 電子計算機使用詐欺(553件)=他人になりすましてインターネットバンキングで送金するなど、コンピュータを使って財産上の利益を得る犯罪です。窃盗(962件)に次いで多く、口座を使う犯罪が上位に並んでいることが分かります
前提犯罪の1位が詐欺で、悪用された取引の1位が内国為替取引。これは別々の事実ではなく、口座に振り込ませて口座で動かすという1つの流れを、入口と出口から数えたものです。
匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)とは
- 通称「トクリュウ」(匿名・流動型の略)。2024年から犯罪収益移転危険度調査書の分析対象に加わった
- 中核的人物の匿名化:指示役はSNSや匿名性の高いアプリでつながり、正体を隠す
- 犯罪実行者の流動化:実行役は「闇バイト」などで募集され、次々に入れ替わる(使い捨て)
- 多様な資金獲得活動:詐欺が最も多く、窃盗・薬物事犯・強盗なども
- 手口:架空・他人名義の口座を使った送金、コインロッカーを使った犯罪収益の受け渡し など
- 対策が難しい理由:中核が匿名で実行役が流動的なため、組織の全容解明や検挙が難しい
頭は匿名のまま、手足は次々に入れ替わる。だから全体像がつかみにくく検挙も難しい、というのがトクリュウの特徴です。
| トクリュウによるとみられる資金獲得犯罪 (2024年中・罪種別) | 検挙人員の多い順 |
|---|---|
| 主な資金源 | ①詐欺(2,655人) ②窃盗(991人) ③薬物事犯(917人) ④強盗(348人) ⑤風営適正化法違反(292人) |
資金源の中心はここでも詐欺です。上の検挙事例の表が「件数」だったのに対し、こちらは「人数」で数えられている点だけ気をつけてください。
⚠ ひっかけに注意
- 前提犯罪は詐欺が最多(1,050件)。薬物事犯は67件と少なく、「入口は薬物」は誤りです。マネー・ローンダリングというと薬物取引の資金を連想しがちなところを突いてくる出題で、順位そのものを覚えていれば迷いません。次いで多いのは窃盗(962件)、電子計算機使用詐欺(553件)の順です
- 最も多く悪用された取引は内国為替取引(1,128件)。「外国為替取引が最多」は誤りです。海外送金のほうが怪しそうに見えますが、実際に数が多いのは国内の振込・送金です。「グローバル化」「技術の革新」といったもっともらしい前置きが付くと引きずられやすいので、数字で判断してください。次いで現金取引(270件)、クレジットカード(179件)と続きます
- トクリュウは中核が匿名・実行役が流動。「中核的人物の流動化/犯罪実行者の匿名化」と入れ替えるのが定番の出題です。どちらの語も文章に出てくるため、うっかり読み飛ばすと正しく見えてしまいます。隠れているのは頭のほう、入れ替わるのは手足のほうと、役割で覚えてしまうのが確実です
- 資金獲得活動は多様(詐欺・窃盗・薬物事犯・強盗など)で、犯罪収益の還流を伴います。「限定的な資金獲得活動」と書かれていたら誤りです。特殊詐欺の犯行グループだけを見ていた時代とは範囲が変わった、という点が2024年からの分析拡大の趣旨です
- 主な犯行主体は暴力団・匿名流動型犯罪グループ・来日外国人犯罪グループなど。「暴力団と来日外国人犯罪グループの2つである」と数を限る書き方は誤りです。「2つ」「のみ」と限定する言い回しが出てきたら、まず疑ってください
📎 公式情報・出典(別タブで開きます)
この記事の内容は、次の公式情報にもとづいています。
- 国家公安委員会「令和7年 犯罪収益移転危険度調査書」(PDF)
- 金融庁「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策」
- 警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等(警察相談専用電話#9110)」
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16問解くと結果が表示されます。
もう一度チャレンジを押すと、出題の順番が入れ替わります。
問題 1 / 16
検挙されたマネー・ローンダリング事犯や疑わしい取引の届出情報を分析すると、前払式支払手段・暗号資産・資金移動サービスの悪用が増加するなど、悪用される取引の広がりがみられる。
決済手段の多様化を受けて、悪用される取引も前払式支払手段・暗号資産・資金移動サービスなどへ広がっている。
問題 2 / 16
近年は決済手段が多様化しているが、暗号資産・前払式支払手段・資金移動サービスなどは現金取引よりもリスクが小さく、悪用の懸念はない。
逆である。これらの新しい決済手段の悪用はむしろ増加しており、悪用される取引が広がっている。
問題 3 / 16
「令和7年 犯罪収益移転危険度調査書」によると、2022年から2024年までの検挙事例で、検挙の前提となった犯罪として最も多かったのは詐欺である。
前提犯罪は詐欺(1,050件)が最多、次いで窃盗(962件)、電子計算機使用詐欺(553件)と続く。薬物事犯は67件と少ない。
問題 4 / 16
グローバル化の進展と技術の革新により、2022年から2024年までの検挙事例では、外国為替取引が最も多く悪用された。
最も多く悪用されたのは内国為替取引(国内の送金・1,128件)。海外送金(外国為替)よりも国内送金のほうが多く悪用されている点に注意。次いで現金取引(270件)、クレジットカード(179件)。
問題 5 / 16
「令和7年 犯罪収益移転危険度調査書」によると、架空・他人名義の口座は、マネー・ローンダリングの主要な犯罪インフラとなっている。
架空・他人名義口座は、他人になりすまして犯罪収益を移転できるため、主要な犯罪インフラとなっている。
問題 6 / 16
「令和7年 犯罪収益移転危険度調査書」によると、マネー・ローンダリングの主な犯行主体は、暴力団と来日外国人犯罪グループの2つである。
主な犯行主体には、暴力団・来日外国人犯罪グループのほか、近年分析対象に加わった匿名・流動型犯罪グループも含まれる。「2つ」に限られない。
問題 7 / 16
2024年の日本国内における詐欺の被害額は、前年(2023年)の約2倍に増加した。
2024年の詐欺被害額は約3,074億円で、2023年(約1,630億円)の約2倍に急増している。
問題 8 / 16
マネー・ローンダリング事犯の検挙は年々増加しているが、ITシステムの高度化により、対策の必要性は低下している。
検挙が増えるなか手口も巧妙化・多様化しており、ITが高度化しても対策の必要性はむしろ高まっている。
問題 9 / 16
犯罪収益移転危険度調査書は、これまで特殊詐欺の犯行グループを主体として分析してきたが、2024年より範囲を拡大し「匿名・流動型犯罪グループ」についても分析を行っている。
2024年から、特殊詐欺に限らず広く資金獲得を行う主体として匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)が分析対象に加わった。
問題 10 / 16
匿名・流動型犯罪グループの特徴は、「中核的人物の流動化」と「犯罪実行者の匿名化」である。
正しくは中核的人物の匿名化と犯罪実行者の流動化。問題文は匿名化と流動化が入れ替わっている。
問題 11 / 16
匿名・流動型犯罪グループは、「限定的な資金獲得活動」を特徴とする。
特徴は多様な資金獲得活動と犯罪収益の還流。限定的ではない。
問題 12 / 16
匿名・流動型犯罪グループの主な資金源の1つとして「詐欺」が挙げられる。
2024年中の資金獲得犯罪では詐欺が最も多く、次いで窃盗・薬物事犯・強盗などが続く。
問題 13 / 16
匿名・流動型犯罪グループの手口としては、架空・他人名義の口座を使った送金や、コインロッカーを使った犯罪収益の受け渡しなどが挙げられる。
架空・他人名義口座やコインロッカーなどを使って、犯罪収益の移転・受け渡しを巧妙に行う。
問題 14 / 16
匿名・流動型犯罪グループは、固定的なメンバーと明確な指揮命令系統をもつ、伝統的な組織である。
中核的人物の匿名化と実行者の流動化が特徴であり、固定的なメンバーや明確な指揮系統を前提とする伝統的な組織像とは異なる。
問題 15 / 16
匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)は、SNS等を通じて「闇バイト」として実行役を募集するなど、実行者が流動的に入れ替わる点に特徴がある。
中核の指示役は匿名のまま、実行役を闇バイトで次々に募集・交代させるため、組織の全容解明が難しい。
問題 16 / 16
匿名・流動型犯罪グループは、得た犯罪収益をすぐに費消してしまうため、マネー・ローンダリングをほとんど行わない。
匿名・流動型犯罪グループは、得た犯罪収益を、架空・他人名義の口座を次々に経由させて送金したり、暗号資産に交換したり、コインロッカーで現金を受け渡したりして、その出所を分かりにくくする巧妙なマネー・ローンダリングを行っている。

第1章 金融犯罪
検挙事例・匿名流動型犯罪グループ
検挙事例・匿名流動型犯罪グループ
/16問
点数はご使用の端末に保存されます。問題は毎回並び替わります。
第1章③まとめ:検挙事例と匿名・流動型犯罪グループ
- 検挙事例の前提犯罪は詐欺が最多(1,050件)、悪用された取引は内国為替取引が最多(1,128件)。決済手段の多様化(前払式・暗号資産・資金移動)で悪用が拡大。
- 主な犯行主体は暴力団・匿名流動型犯罪グループ・来日外国人犯罪グループなど。
- トクリュウの特徴は中核的人物の匿名化と犯罪実行者の流動化(闇バイトで実行役を募集)、多様な資金獲得活動。主な資金源は詐欺。
- 架空・他人名義口座やコインロッカーで巧妙にマネー・ローンダリングを行う。手口の巧妙化で口座凍結の要請も急増。
「前提犯罪は詐欺が最多」「最も多く悪用された取引は内国為替(外国為替ではない)」「トクリュウは中核が匿名・実行役が流動(逆に注意)」が頻出ひっかけ! 試験、頑張ってください‼
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