行内の資格一覧を眺めていると、名前のよく似た試験が並んでいます。AML/CFTスタンダードコースと、金融AMLオフィサー。どちらもマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の知識をみる検定で、名前だけでは何が違うのかわかりません。実は主催団体も出題形式も別の試験です。銀行に約30年いる私が、両方の公式情報をならべて違いを整理し、立場別にどちらを受けるかの目安をまとめました。
結論:主催が違う別の試験。迷ったら立場で選ぶ
先に結論です。窓口や営業店で日々のお客さま対応にあたる方は金融AMLオフィサーの[取引時確認]または[基本]。営業店の管理職なら[実践]。本部や管理者の立場の方、昇格要件で名前を挙げられた方、国際的な枠組みから管理態勢まで一通り押さえたい方はAML/CFTスタンダードコースです。
理由は、それぞれの試験が公式に掲げている対象者がはっきり違うからです。金融AMLオフィサーは種目ごとに「営業店の一般行職員・パート行職員」「窓口業務に携わる方」「営業店の管理職」と対象を分けています。一方でAML/CFTスタンダードコースは、預金取扱金融機関の本部担当者および営業店の管理者・窓口担当者等が対象で、1つの試験で7分野を横断します。守備範囲の広さで選ぶか、自分の持ち場の深さで選ぶかの違いです。
早わかり:2つの試験の基本情報
AML/CFTスタンダードコース
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主催 | 一般社団法人 金融財政事情研究会(きんざい) 金融業務能力検定シリーズ |
| 出題形式 | 四答択一式50問 |
| 試験時間 | 100分 |
| 合格基準 | 100点満点で70点以上 |
| 受験手数料 | 5,500円(税込) |
| 実施方式 | CBT方式で通年実施。受験希望日の3日前まで予約可能 |
| 出題範囲 | 金融犯罪/FATF/国内法規制/リスクベース・アプローチ 管理態勢/顧客管理/疑わしい取引の7分野 |
| そのほか | 合格するとその場でスコアレポートが渡され、 認定名称を名刺などに記載できる |
金融AMLオフィサー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主催 | 日本コンプライアンス・オフィサー協会 (実施・運営=株式会社経済法令研究会) |
| 種目 | [基本][取引時確認][実践]の3種目 |
| 出題形式 | 三答択一式50問 |
| 試験時間 | 90分 |
| 合格基準 | 100点満点中70点以上 |
| 受験料 | [基本][取引時確認]4,950円 [実践]5,500円 いずれも別途事務手数料330円 |
| 実施方式 | CBT方式は2026年4月27日から2027年3月31日まで。 全国一斉の公開試験は2026年度から7月・12月の年2回。 次回は2026年12月6日(基本・実践) |
金融AMLオフィサーは3種目。ねらいの違い
それぞれの試験のねらいは、公式に次のように示されています(要約)。
| 種目 | ねらいと想定されている受験者 |
|---|---|
| [基本] | 主に営業店の一般行職員・パート行職員が対象。 マネー・ローンダリングの基礎知識と営業店実務への対応をみる |
| [取引時確認] | 主に営業店の窓口業務に携わる一般行職員・パート行職員が対象。 基礎知識に加えて取引時確認の実務対応力をみる |
| [実践] | 主に営業店の管理職が対象。 法制度の理解度と実務対応の適合性をみる |
出題項目を見ると、[基本]は基礎知識・取引時確認・疑わしい取引の届出制度・リスクベース・アプローチの4本立て。[実践]はそこに犯罪収益移転防止法と外為取引が入ります。海外送金や外国為替の窓口にいる方には、[実践]の範囲が実務に近く感じられるはずです。
出題範囲は、どこが重なってどこが違うのか
重なるのは土台の部分です。犯罪収益移転防止法、取引時確認、疑わしい取引の届出、リスクベース・アプローチ。ここは両方の試験に共通して出てきます。つまり、どちらかを勉強しておけば、もう一方の土台はできあがります。
| この試験ならでは | 中身 |
|---|---|
| AML/CFTスタンダードコースだけ | FATF(金融活動作業部会)と国際的な相互審査 経営陣の関与や3つの防衛線を含む管理態勢 疑わしい取引の参考事例まで踏み込む |
| 金融AMLオフィサーだけ | 窓口の一般行職員・パート行職員向けに絞った[取引時確認] 管理職向けの[実践]に外為取引が入る 年2回の全国一斉公開試験でも受けられる |
言い方を変えると、AML/CFTスタンダードコースは3つの防衛線のような「組織としてどう回すか」まで問われます。窓口の実務だけを深めたい方には広すぎると感じるかもしれません。逆に、本部やコンプライアンスの部署を視野に入れている方には、この広さがそのまま強みになります。
銀行員はどっちを受ける?立場別の目安
| あなたの立場 | おすすめと理由 |
|---|---|
| 窓口・パート行職員 | 金融AMLオフィサー[取引時確認]。 公式が想定している受験者そのもので、範囲も持ち場に近い |
| 営業店の一般行職員 | 金融AMLオフィサー[基本]から。 物足りなくなったらスタンダードコースへ |
| 営業店の管理職 | 金融AMLオフィサー[実践]。 本部を視野に入れるならスタンダードコースも |
| 本部・コンプライアンス部門 | AML/CFTスタンダードコース。 管理態勢と国際的な枠組みまで入るのはこちらだけ |
| 外国為替・海外送金の担当 | AML/CFTスタンダードコース。 制裁リストの照合や送金の確認が範囲に入る |
| 昇格要件で名前を挙げられた人 | 指定された試験を受けるのが最優先。 行内の要項を必ず確認してください |
| 履歴書や名刺に書きたい人 | AML/CFTスタンダードコース。 合格すると認定名称を名刺などに記載できる |
外国為替の現場に長くいた立場から補足すると、海外送金の確認や制裁リストの照合は第4章の海外送金の単元で正面から扱われます。外為の担当者にとっては、AML/CFTスタンダードコースの範囲がそのまま日々の仕事の解説書になります。
両方受けるなら、順番と費用も見ておく
土台が重なっているので、続けて受けるのは無理な話ではありません。費用の目安は、AML/CFTスタンダードコースが5,500円(税込)、金融AMLオフィサーがCBT方式で4,950円または5,500円に事務手数料330円。合わせて1万円を超えます。会社の報奨金や受験料補助の制度があるかどうかで、実質の負担はかなり変わります。申請漏れがないよう、勤務先の福利厚生をあわせて確認してください。
順番は、持ち場に近いほうを先に。窓口の方なら[取引時確認]で足元を固めてからスタンダードコースへ広げる。本部の方なら先にスタンダードコースで全体像をつかむ。資格をどう積み上げるかという話は転職とキャリアのコラムにも書いています。
AML/CFTスタンダードコースを受けると決めたら
当サイトは、この試験の一問一答を全7章そろえています(費用なし・章ごとの総合演習つき)。学習の順番と全記事の地図は合格ロードマップにまとめました。まずは全体像から、という方はこちらからどうぞ。申込の手順は試験の申込ガイド、章別配点は配点とスコアレポートの記事で確認できます。
AML/CFTスタンダードコースはCBT方式で過去問が公開されていないため、本番と同じ四答択一で演習できる公式教材はこの1冊です。法令基準日2026年7月1日に対応しています。

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まとめ
- 主催が違う別の試験。きんざいの四答択一50問100分と、日本コンプライアンス・オフィサー協会の三答択一50問90分
- 金融AMLオフィサーは3種目。窓口は[取引時確認]、一般行職員は[基本]、管理職は[実践]
- 本部・コンプライアンス・外国為替の担当なら、管理態勢や国際的な枠組みまで入るスタンダードコース
- 土台(犯罪収益移転防止法・取引時確認・疑わしい取引の届出・リスクベース・アプローチ)は共通。片方の勉強はもう片方に効く
- 勤務先に指定があればそれが最優先。報奨金や受験料補助の制度もあわせて確認を
名前が似ているせいで迷う試験ですが、公式の対象者を並べてみると住み分けははっきりしています。私自身、行内で似た名前の試験を前にして「どれを受ければいいのか」と手が止まった経験があります。迷って止まっている時間がいちばんもったいないので、持ち場に近いほうから1つ、申し込んでしまうのがいいと思います。
試験勉強に疲れたら息抜きコラムで気分転換して、一息ついてください。これからも学習、頑張ってください!!
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